贔屓球団が勝利する場面の中でも、特に心が躍るのは「サヨナラ勝ち」だろう。
シーソーゲームの末に勝負を決める一打が飛び出したとき。
あるいは、劣勢から一気に試合をひっくり返す一発が生まれたとき。
その瞬間にしか味わえない興奮は、サヨナラ勝ちならではのものだ。
そんなサヨナラの場面で、最も注目されるのは決勝打を放った選手である。
シーズン中に何度もサヨナラ打を記録し、「サヨナラ男」と称される選手も珍しくない。
しかし、試合を終わらせる決勝点を実際に記録するのは、最後にホームを踏んだ走者だ。
塁上から相手にプレッシャーをかけ、勝利を決定づける得点を記録した選手こそ、実はもう一人の「サヨナラ男」なのではないだろうか。
そこで今回は、2025年のプロ野球で記録された「サヨナラ勝ち」全72試合を対象に、決勝のホームを踏んだ選手を集計した。
いわば、2025年の「サヨナラ”ホームイン”王」を決める調査である。
もちろん、実際にタイトルとして表彰されることはない。
それでもこの記事では、最多記録者をしっかりと「キング」として扱ってあげたい。
2025年の最多は3回!3人が同率トップ

2025年に最も多くサヨナラのホームを踏んだのは、以下の3選手だった。
| 選手 | 球団 | 回数 |
| 緒方 理貢 | ソフトバンク | 3回 |
| 外崎 修汰 | 西武 | 3回 |
| 小深田 大翔 | 楽天 | 3回 |
シーズン最多でも3回だったことから、サヨナラの決勝点を何度も記録する難しさが分かる。
まず、チームが本拠地で接戦を演じなければ、サヨナラ勝ちの機会は生まれない。
そのうえで、試合終盤に決勝点となる走者となり、最後にホームまで生還する必要がある。
複数の条件が重ならなければ、サヨナラホームインは記録できないのだ。
さらに興味深いのは、同じ3回でも、3人がホームを踏むまでの過程はそれぞれ異なっていたことである。
まったく差をつけずに3人を同時優勝とするのも、少しもったいない。
ここからは3人のサヨナラホームインを詳しく比較し、独断と偏見による2025年の「サヨナラホームイン王」を決めてみたい。
緒方は3回すべて代走から生還
3人の中で最も特徴的だったのが、ソフトバンクの緒方理貢だ。
緒方が記録した3回のサヨナラホームインは、すべて代走として出場し記録したものだった。
| 日付 | 試合 | 出塁経緯 | 決着 |
| 5月28日 | 2x-1 日本ハム | 海野隆司の代走 | 周東佑京のツーベース |
| 7月2日 | 2x-1 日本ハム | 中村晃の代走 | 山川穂高の2点ツーベース |
| 8月17日 | 1x-0 ロッテ | 近藤健介の代走 | 牧原大成のタイムリー |
緒方は2020年の育成ドラフト5巡目でソフトバンクから指名され、2022年にはウエスタン・リーグで17盗塁を記録して盗塁王を獲得した。
2024年に支配下登録を勝ち取ると、2025年は主に代走や守備固めとして101試合に出場している。
2025年の盗塁成績は、盗塁8・盗塁死3。
成功率は.727だった。
盗塁数だけを見れば、リーグトップクラスというわけではない。
それでも勝負どころの代走として起用され、3回もサヨナラのホームを踏んだことは見逃せない。
サヨナラ勝ちでは、決勝打を放った選手がヒーローになる。
一方で、走力を買われて途中出場し、決勝点を奪った選手も勝利には欠かせない。
特に緒方は、代走で相手にプレッシャーを与え、3回のサヨナラホームインを記録している。
3回すべて代走から生還という記録は、ほかの2人とは明確に異なる特徴となった。
外崎は3回すべて自ら出塁
西武の外崎修汰は、3回すべて自分で出塁したあとにサヨナラのホームを踏んでいる。
| 日付 | 試合 | 出塁経緯 | 決着 |
| 4月27日 | 3x-2 オリックス | ヒット | 中村剛也のツーベース |
| 6月3日 | 1x-0 ヤクルト | 四球 | ショートのエラー |
| 6月11日 | 3x-2 阪神 | ヒット | 炭谷銀仁朗のタイムリー |
4月27日のオリックス戦は、6番サードでスタメン出場。
9回にオリックスのマチャドからヒットを放ち、代打・中村剛也の2ベースでサヨナラのホームを踏んだ。
6月3日のヤクルト戦は、0-0のまま延長11回にもつれこむ投手戦だった。
途中出場した外崎は粘って11球目で四球を勝ち取り、相手のエラーで生還している。
6月11日の阪神戦は5番サードでスタメン出場。
2点ビハインドの9回に阪神の湯浅から内野安打を放ち、逆転サヨナラにつながる攻撃の起点となった。
また、8月11日の楽天戦では、外崎自身がサヨナラのタイムリーヒットを放っている。
走者として決勝のホームを踏むだけでなく、打者として走者をかえす働きも見せており、2025年の「サヨナラ男」であることは間違いないだろう。
代走として起用された緒方とは異なり、外崎は3回すべて自ら打席で出塁している。
勝負手として起用されやすい代走よりも、自分自身でサヨナラの起点をつくったという点では、外崎を一歩上に置きたい。
小深田はいずれのケースも記録
楽天の小深田大翔は、自ら出塁したケースが2回、代走から生還したケースが1回だった。
| 日付 | 試合 | 出塁経緯 | 決着 |
| 5月13日 | 4x-3 ロッテ | 四球 | 渡邊佳明の犠牲フライ |
| 6月14日 | 5x-4 阪神 | ヒット | 石原彪のタイムリー |
| 9月17日 | 3x-2 日本ハム | 黒川史陽の代走 | ボイトのツーベース |
ゴールデンルーキーの宗山塁が入団したこともあり、2025年の小深田は、スタメンだけでなく代走として起用される機会も増えた。
打席数は前年から150以上減らしたが、2023年の盗塁王は、限られた出場機会でも塁上から相手にプレッシャーをかけ続けている。
5月13日のロッテ戦は、8番セカンドでスタメン出場。
9回に四球を選ぶと、すかさず盗塁を決め、最後は渡邊佳明の犠牲フライでサヨナラのホームを踏んだ。
6月14日の阪神戦は、2番セカンドでスタメン出場。
10回2アウトからヒットで口火を切ると、そこから続いた3連打でサヨナラ勝ちを収めている。
9月17日の日本ハム戦は、延長11回に代走として出場。
2アウト1塁から、ボイトのツーベースで一気にホームまで生還した。
自ら出塁した試合でも、代走として起用された試合でも、サヨナラのホームを踏んでいる。
ただ俊足なだけでなく、終盤に強い選手と言えるのかもしれない。
2025年のサヨナラホームイン王は外崎修汰

3回で並んだ緒方理貢、外崎修汰、小深田大翔。
単純な回数では、3人に差はない。
しかし、その内容を見ると、緒方は3回すべて代走として出場。
小深田は自ら出塁したケースが2回、代走として出場したケースが1回だった。
一方、外崎は唯一3回すべて自ら打席に立って出塁し、サヨナラのホームまで生還している。
代走の選手は、同点の終盤に塁上へ送られるため、サヨナラホームインのチャンスを得やすい。
もちろん、そこで実際にホームまで生還することには価値がある。
しかし、自分で出塁しなければ始まらない外崎の3回は、より難易度が高いと言えるのではないか。
さらに外崎は、8月11日の楽天戦で自身もサヨナラのタイムリーヒットを記録している。
走者として3回の決勝点を記録し、別の試合では打者としてサヨナラ勝ちのヒーローに輝いた。
以上を踏まえ、当ブログが選ぶ2025年の「サヨナラホームイン王」は、
西武ライオンズの外崎修汰としたい。
公式タイトルでも何でもないが、2025年のキングは外崎である。
おめでとうございます。
詳細データ
2回記録した選手は7人
トップの3回に続き、サヨナラホームインを2回記録した選手は7人いた。
| 選手 | 球団 | 回数 |
|---|---|---|
| 麦谷祐介 | オリックス | 2回 |
| 中川圭太 | オリックス | 2回 |
| 野口智哉 | オリックス | 2回 |
| 矢澤宏太 | 日本ハム | 2回 |
| 田宮裕涼 | 日本ハム | 2回 |
| 小郷裕哉 | 楽天 | 2回 |
| 宗山塁 | 楽天 | 2回 |
興味深いのは、7人全員がオリックス、日本ハム、楽天の選手だったことだ。
実はこの3球団は、2025年の球団別サヨナラ勝ち数でも10試合でトップに並んでいる。
オリックスからは麦谷祐介、中川圭太、野口智哉の3人、日本ハムからは矢澤宏太と田宮裕涼の2人、楽天からは小郷裕哉と宗山塁の2人がランクインした。
さらに楽天には3回を記録した小深田大翔もいる。
小深田・小郷・宗山の3人だけで、チームのサヨナラ勝ち10試合のうち7試合でホームを踏んだことになる。
球団別サヨナラ勝ちランキング
2025年の球団別サヨナラ勝ち数は、以下のようになった。
| 順位 | 球団 | サヨナラ勝ち |
| 1位 | オリックス | 10試合 |
| 1位 | 日本ハム | 10試合 |
| 1位 | 楽天 | 10試合 |
| 4位 | 巨人 | 7試合 |
| 4位 | 西武 | 7試合 |
| 6位 | ヤクルト | 6試合 |
| 7位 | ソフトバンク | 5試合 |
| 7位 | ロッテ | 5試合 |
| 9位 | 中日 | 4試合 |
| 10位 | DeNA | 3試合 |
| 10位 | 阪神 | 3試合 |
| 12位 | 広島 | 2試合 |
オリックス、日本ハム、楽天のパ・リーグ3球団が、10試合でトップに並んだ。
同じ10試合でも、球団によってサヨナラ勝ちの形には違いがある。
オリックスはサヨナラホームランが多い
オリックスの10試合を見ると、若月健矢、野口智哉、中川圭太、頓宮裕真、廣岡大志がサヨナラホームランを放っている。
10試合中5試合がサヨナラホームランによる決着だった。
しかも5本のうち4本はソロホームラン。
ランナーがいない状況からも、一振りで試合を決める勝負強さを持った選手が多かった。
また、打者としては若月がサヨナラホームラン1本、タイムリー2本を記録。
「サヨナラ男」と呼べる働きを見せている。
日本ハムは8人がサヨナラのホームを踏んだ
日本ハムでは、10試合で8人の選手がサヨナラのホームを踏んでいる。
2回を記録したのは矢澤宏太と田宮裕涼のみ。
そのほか、松本剛、五十幡亮汰、レイエス、石井一成、郡司裕也、山縣秀が1回ずつ記録している。
特定の選手に偏らず、多くの選手が決勝点を記録したのが特徴だ。
楽天は3人で7回
楽天では、小深田大翔が3回、小郷裕哉と宗山塁が2回ずつサヨナラのホームを踏んだ。
この3人だけで、チームのサヨナラ勝ち10試合中7試合を占めている。
残る3試合でホームを踏んだのは、中島大輔、武藤敦貴、黒川史陽だった。
日本ハムが多くの選手に分散していたのとは対照的に、楽天は一部の選手にサヨナラホームインが集中していた。
パ・リーグはセ・リーグの約1.9倍
リーグ別に見ると、大きな差が出ていることがわかる。

2025年のサヨナラ勝ちは、セ・リーグが25試合、パ・リーグが47試合。
パ・リーグでは、セ・リーグの約1.9倍のサヨナラ勝ちが生まれていた。
オリックス、日本ハム、楽天の3球団だけで30試合を記録しており、この3球団だけでもセ・リーグ6球団の合計25試合を上回っている。
ここまで差がついた理由は何だろうか。
DH制はサヨナラの確率に影響する?
一つ考えられるのが、DH制の有無である。
DH制のないセ・リーグでは、先発投手にまだ余力があっても、得点機で打順が回れば代打を送ることがある。
そのため、パ・リーグより早い段階で先発投手を降板させ、複数の救援投手で試合をつなぐ場面も多い。
実際に2025年は、完投数がセ・リーグ37に対してパ・リーグ51。
一方、ホールドはセ・リーグ793、パ・リーグ685。
セーブもセ・リーグ252、パ・リーグ209と、いずれもセ・リーグの方が多かった。
DH制のないセ・リーグでは、先発から救援陣につないでリードを守る形がより多く、その結果として終盤に致命的な失点を喫する機会が少なかった可能性はある。
反対に、DH制のあるパ・リーグでは、投手の打順を理由に先発を交代させる必要がない。
先発投手をより長く引っ張ることができる一方、終盤まで先発が投げることで、そこでつかまるケースが増えることも考えられる。
もちろん、これだけで47対25という大差をすべて説明できるわけではない。
2025年はオリックス、日本ハム、楽天にサヨナラ勝ちが集中しており、偶然の要素も大きいだろう。
それでも、DH制による投手運用やベンチワークの違いが、リーグ間の差に多少なりとも影響している可能性はありそうだ。
セ・リーグでは2027年からDH制が導入される。
果たして、それ以降はこの差が小さくなっていくのだろうか。
サヨナラ走者の約3人に1人は代走
2025年のサヨナラ勝ち全72試合のうち、代走として出場した選手がサヨナラのホームを踏んだのは25試合だった。
割合にすると34.7%。
およそ3試合に1試合で、代走として投入された選手がサヨナラのホームを踏んだことになる。
サヨナラの場面では、二塁からヒット1本でホームまで還れるか、三塁から浅い外野フライでも生還できるかといった走力が勝敗を左右する。
そのため、同点の終盤に走者が出れば、より足の速い選手を代走として送るのは自然な采配である。
中でもソフトバンクは、サヨナラ勝ち5試合のうち4試合で代走の選手がホームを踏んでいた。
内訳は緒方理貢が3回、笹川吉康が1回である。
緒方の3回すべてが代走だったことは特徴的だが、全72試合まで視野を広げると、代走からのサヨナラ生還自体は決して珍しいものではなかった。
こうして見ると、3回すべて自ら出塁した外崎の記録が、より際立って見えてくるだろう。
サヨナラ勝ちはどのように決まったのか
2025年のサヨナラ勝ち72試合のうち、サヨナラホームランによる決着は13試合だった。
つまり約18%は、後続の打者にホームへ還してもらったのではなく、自らホームランを放って最後のホームまで踏んだケースということになる。
残る59試合では、タイムリーヒットや犠牲フライ、押し出し、エラー、暴投などによって、塁上の走者がサヨナラのホームを踏んでいた。
全72試合の決着方法の内訳を見る
| 決着内容 | 試合数 |
| ホームラン以外の安打 | 43試合 |
| ホームラン | 13試合 |
| 犠牲フライ | 8試合 |
| 押し出し四球 | 3試合 |
| エラー | 3試合 |
| 押し出し死球 | 1試合 |
| 暴投 | 1試合 |
もしサヨナラホームイン王を狙うとすれば、自ら一発を放ってホームまで帰ってくるのも一つの方法というわけだ。
なお、サヨナラホームラン13試合のうち5試合はオリックスが記録している。
先ほど紹介したとおり、2025年のオリックスは特に「自分で打って、自分で帰る」サヨナラが多いチームだった。
延長戦でのサヨナラ勝ちが半数を超えた
サヨナラ勝ちが決まったイニングは以下のとおり。
| イニング | 試合数 |
| 9回 | 35試合 |
| 10回 | 16試合 |
| 11回 | 11試合 |
| 12回 | 10試合 |
9回に決着したのは35試合。
一方、延長戦で決着したのは37試合で、全体の51.4%を占めた。
わずかではあるが、9回よりも延長戦で決着した試合の方が多かったことになる。
延長戦になれば選手交代も進み、同点の場面で出塁した走者に代走を送る機会も増える。
代走からのサヨナラホームインが25回も記録された背景には、延長戦の多さも関係しているのかもしれない。
また、イニングが進むにつれて、両チームとも勝ちパターンの救援投手を使い切っているケースが増えていく。
延長10回、11回、12回と進めば、普段は接戦の終盤を任されない投手がマウンドに上がることもある。
攻撃側からすれば得点のチャンスが生まれやすくなり、それが延長戦でのサヨナラ勝ちの多さにつながっている可能性もありそうだ。
まとめ
2025年のプロ野球では、72試合のサヨナラ勝ちが記録された。
最も多くサヨナラのホームを踏んだのは、小深田大翔、外崎修汰、緒方理貢の3選手で、いずれも3回。
その中でも、3回すべて自ら出塁してサヨナラのホームを踏み、別の試合では自身もサヨナラ打を放った外崎修汰を、当ブログでは2025年の「サヨナラホームイン王」に選出した。
また、全72試合を調べてみると、いくつか興味深い傾向も見えてきた。
- 代走として出場した選手の生還は25試合(34.7%)
- サヨナラホームランによる決着は13試合
- 9回決着の35試合に対し、延長戦での決着は37試合
- 球団別ではオリックス、日本ハム、楽天が10試合で最多
- リーグ別ではセ・リーグ25試合、パ・リーグ47試合と大きな差がついた
サヨナラ勝ちでスポットライトを浴びるのは、多くの場合、決勝打を放った選手だ。
しかし、その前には自ら塁に出た選手がいて、代走として送り込まれた選手がいて、最後の1点を奪うためにホームまで走り切った選手がいる。
次にサヨナラ勝ちを見るときは、打った選手だけでなく、「最後にホームを踏んだのは誰だったのか」にも注目してみてはいかがだろうか。
果たして2026年には、外崎を上回る「サヨナラホームイン男」が現れるのだろうか。
過去のシーズンも含め、今後もこの記録を追ってみたい。




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