歴代「高卒No.1投手」は本当に当たりだったのか?2001〜2025年ドラフト25年検証

ドラフト会議 野球の話

「高校生No.1右腕」「世代トップ左腕」「超高校級エース」――。

ドラフト前、毎年のようにそう評される投手たちがいる。

複数球団が競合したドラフト1位もいれば、進学や社会人入りの可能性を残しながら、プロ入りを選んだ逸材もいる。
なかには、甲子園で一気に評価を高めた投手や、甲子園出場がなくても素材の大きさで高く評価された投手もいた。

では、ドラフト当時の「高卒No.1投手」という評価は、本当に正しかったのだろうか

今回は2001〜2025年ドラフトの25年間を対象に、各年の「高卒No.1投手」を独自に選定。
当時の評価とプロ入り後のキャリアを振り返りながら、その成功率と傾向を検証していく。

※成功度は「ドラフト当時の高卒No.1投手としての期待値」を基準に判定
※成功度は筆者基準(S〜D評価)
※評価が割れる年度については、候補選手を複数掲載する
※近年ドラフト組はキャリア途中のため暫定評価を含む
※大学・社会人進学などで当年のドラフト指名対象にならなかった投手は除外

歴代「高卒No.1投手」一覧

ドラフト会議

まずは一覧から確認していこう。

選手の選定はプロ入り後の成績を加味せず、「ドラフト時点でのNo.1評価」を基準にしている。
そのうえで、プロ入り後の主な実績と成功度をあわせて記載した。

また、絞りきれなかった場合や、特筆すべき投手がいる年は複数人を挙げる。

※現役選手の成績は2025年シーズン終了時点

2001~2010年

選手高校当時評価主な実績成功度
2001寺原 隼人(ダイエー1位)日南学園高4球団競合(当時自由枠あり)通算73勝81敗、最後の13球団勝利B
2002高井 雄平(ヤクルト1位)東北高2球団競合(当時自由枠あり)通算18勝19敗、野手転向後に開花D
2003①西村 健太朗(巨人2位)広陵高センバツ優勝投手、巨人以外なら社会人通算81S77H、最多セーブ獲得A
2003②須永 英輝(日本ハム2位)浦和学院高巨人以外指名拒否も強行指名通算0勝3敗、30登板に終わるD
2004①ダルビッシュ 有(日本ハム1位)東北高オリックス・楽天との競合予想も単独日米通算208勝131敗、MLBタイトルS
2004②涌井 秀章(西武1位)横浜高中日との競合予測も単独通算166勝167敗、3球団で最多勝S
2005辻内 崇伸(巨人1位)大阪桐蔭高2球団競合(高校生ドラフト)一軍登板なし、故障続きのキャリアD
2006田中 将大(楽天1位)駒大苫小牧高4球団競合(高校生ドラフト)日米通算200勝118敗、「24勝0敗」S
2007①佐藤 由規(ヤクルト1位)仙台育英高5球団競合(高校生ドラフト)BIG3通算32勝36敗、12勝シーズン後に故障C
2007②唐川 侑己(ロッテ1位)成田高2球団競合(高校生ドラフト)BIG3通算82勝77敗64H、救援転向で復活A
2008赤川 克紀(ヤクルト1位)宮崎商業高技巧派の長身左腕通算14勝20敗、オールスター出場1回C
2009菊池 雄星(西武1位)花巻東高6球団競合、甲子園のスター左腕日米通算121勝104敗、大谷翔平の憧れS
2010一二三 慎太(阪神2位)東海大相模高甲子園準優勝投手一軍登板なし、1年で外野手転向D

2011~2020年

選手高校当時評価主な実績成功度
2011①武田 翔太(ソフトバンク1位)宮崎日大高甲子園出場なしも完成度No.1通算66勝48敗、侍JAPAN選出B
2011②松本 竜也(巨人ハズレ1位)英明高歴代最高身長の左腕、2球団競合一軍登板なし、野球賭博関与で失格処分D
2012①藤浪 晋太郎(阪神1位)大阪桐蔭高4球団競合、甲子園春夏連覇のエース日米通算65勝62敗、高卒1年目から10勝A
2012②大谷 翔平(日本ハム1位)花巻東高MLB挑戦表明もあり単独指名日米通算81勝35敗、二刀流のGOATS
2013松井 裕樹(楽天1位)桐光学園高5球団競合、甲子園最多奪三振記録日米通算237S、最多セーブ3回S
2014①安樂 智大(楽天1位)済美高2球団競合、最速157キロのタフネス右腕通算18勝21敗50H、パワハラ問題で退団C
2014②髙橋 光成(西武1位)前橋育英高甲子園優勝投手、指名公言で一本釣り通算73勝77敗、「0勝11敗」経験B
2015①髙橋 純平(ソフトバンク1位)県立岐阜商業高3球団競合、甲子園経験なし通算4勝3敗19H、実働3年のみD
2015②小笠原 慎之介(中日ハズレ1位)東海大相模高甲子園優勝左腕、2球団競合日米通算47勝66敗、MLB挑戦も出戻りにB
2016①寺島 成輝(ヤクルト1位)履正社高高校BIG4、世代No.1左腕通算1勝1敗3H、怪我続きのサウスポーD
2016②今井 達也(西武1位)作新学院高甲子園優勝投手、高校BIG4通算58勝45敗、安定感を増しMLB挑戦A
2016③藤平 尚真(楽天1位)横浜高高校BIG4、救援として日本代表入り通算13S41H、救援転向で開花B
2017石川 翔(中日2位)青藍泰斗高甲子園経験なし、野手の豊作年1試合のみ登板、ガラスのエースD
2018吉田 輝星(日本ハムハズレ1位)金足農業高甲子園準優勝投手、ミレニアム世代通算7勝9敗19H、2度の50試合登板C
2019①佐々木 朗希(ロッテ1位)大船渡高4球団競合、令和の怪物日米通算30勝16敗、完全試合達成A
2019②奥川 恭伸(ヤクルト1位)星稜高3球団競合、甲子園準優勝投手通算16勝15敗、プロ入り後も怪我に泣くC
2020髙橋 宏斗(中日1位)中京大中京高甲子園中止年、慶應大不合格からプロへ通算33勝32敗、最優秀防御率も近年低調A

2021~2025年

選手高校当時評価主な実績成功度
2021①小園 健太(DeNA1位)市立和歌山高2球団競合高校BIG3通算1勝1敗、伸び悩みが続くD
2021②風間 球打(ソフトバンク1位)明桜高高校BIG3、最速157キロ右腕一軍登板なし、イップスで球速ダウンD
2021③森木 大智(阪神ハズレ1位)高知高高校BIG3、中学時に150キロ計測通算0勝2敗、マイナーリーグ挑戦中D
2022①斉藤 優汰(広島1位)苫小牧中央高高卒投手不作年、唯一のドラフト1位通算0勝1敗、素材型の大型右腕D
2022②山田 陽翔(西武5位)近江高甲子園通算11勝、実績No.1も5位指名通算3勝3敗17H、中継ぎでブレイクB
2023前田悠伍(ソフトバンクハズレ1位)大阪桐蔭高大卒投手の当たり年、3球団競合通算1勝1敗、2026年にブレイク中
2024①今朝丸 裕喜(阪神2位)報徳学園高センバツ2年連続準優勝、世代No.1右腕一軍登板なし、ファームで好成績
2024②藤田 琉生(日本ハム2位)東海大相模高甲子園で活躍した198cmのNo.1左腕一軍登板なし、制球面など課題は多い
2025石垣 元気(ロッテ1位)健大高崎高2球団競合、MLB注目の最速158キロ大型ルーキー、奪三振能力はかなり高い

成功度別

一覧を見るだけでも、かなり振れ幅が大きいことがわかる。

球界を代表する投手になった例もあれば、期待されたキャリアを送れず、一軍登板も果たせぬまま引退するケースもある。

では、成功度別に見るとどうなるのか。

今回の一覧をもとに、成功度ごとの人数を整理すると以下のようになる。

成功度人数主なイメージ
S6人球界を代表する投手になった大成功例
A6人期待どおりの活躍をした成功例
B6人一軍の戦力になり、一定以上の実績を残した選手
C5人一軍実績はあるが、期待値には届かなかった選手
D12人高卒No.1級の評価に対して、プロでは苦しんだ選手
4人キャリア途中のため評価保留

「未」評価の4人を除くと、今回の対象は35人
そのうちS・A・B評価は18人で、半数強が一定以上の成功を収めている

一方で、最低となるD評価も12人いる。
つまり、「高卒No.1投手」と評価されたからといって、必ずしもプロで大成するわけではない。

高校時代に抜けた存在だった投手でも、プロ入り後は故障、フォーム修正、球速低下、制球難、ポジション変更など、さまざまな壁にぶつかっている。

ここからは、特に印象的だった年を細かく見ていこう。

評価通りに大成功となった年

2004年のダブルエース

まず目立つのは、ドラフト当時の高い評価に見合う活躍を見せたケースだ。

代表的なのは、2004年のダルビッシュ有と涌井秀章だろう。

ダルビッシュは東北高時代から全国的な注目を集め、日本ハムに単独1位指名された。
甲子園に4度出場し、実力だけでなくスター性も抜群。
高校生投手としては別格の存在だった。

それほどの投手がなぜ単独指名だったのか。

圧倒的な才能は誰もが認める一方で、当時はスカウト間で性格面や練習への取り組み方を不安視する声もあったと言われている。
実際、入団直後には未成年喫煙騒動もあり、順風満帆なスタートとはいかなかった。

それでも日本ハムは、ダルビッシュの圧倒的な才能を信じて指名した。
そして、結果的にその判断は大正解。

プロ入り後のダルビッシュは、NPBで圧倒的な成績を残し、MLBでも長く活躍。
まさに「高卒No.1投手」の期待値を大きく上回った存在といえる。

同じ2004年の涌井も、横浜高のエースとして高い評価を受けて西武から単独指名。
最多勝を3球団で獲得するなど、長くプロ野球界の第一線で投げ続けている。
ダルビッシュの存在があまりに大きい年だが、涌井も十分にS評価に値するキャリアを築いている。

2004年は、同じ年にダルビッシュと涌井という2人の最高級投手がいた、かなり特殊な年だったといえる。

北の怪物たち、世界へ

2006年の田中将大も、非常にわかりやすい成功例だ。

駒大苫小牧高のエースとして甲子園を沸かせ、ドラフトでは4球団競合。
楽天入団後は1年目から11勝を挙げて新人王を獲得すると、2013年には「24勝0敗」という伝説的なシーズンを残した。

当時は、甲子園で絶大な人気を誇った斎藤佑樹と双璧の存在だった。
完成度では斎藤の方が上と見る声もあったが、斎藤は早稲田大への進学を希望していたため、この年のドラフト対象者で見ればトップは田中でよいだろう。

高校時代の注目度、ドラフト時の評価、プロ入り後の実績がきれいにつながった、非常に珍しいケースである。

2009年の菊池雄星も、評価通りに大成した一人だ。

花巻東高時代から「超高校級左腕」として注目され、6球団競合の末に西武へ入団。
プロ入り直後こそ時間はかかったが、最終的にはNPBでトップクラスの成績を残し、MLBでも先発投手としてキャリアを重ねている。

高卒投手は時間がかかることも多いが、菊池は素材型の大型左腕がしっかり育った一番の成功例と言えるだろう。

世界へ羽ばたいた二大巨頭

2012年も非常に印象的な年だ。

当時の高校球界で最も評価が高かった投手は、大阪桐蔭高の藤浪晋太郎だった。

甲子園春夏連覇のエースであり、ドラフトでは4球団競合の末に阪神へ入団。
高卒1年目から3年連続二桁勝利を挙げるなど、プロ入り直後のインパクトは圧倒的だった。

もう1人のスター候補とされていたのが大谷翔平である。

花巻東高時代から投打ともに規格外の才能を見せており、投げては高校生史上初の160キロを計測。
3年夏に甲子園出場を逃した際には、高野連の会長が「大谷投手を甲子園で見られなかったことが残念」という趣旨の発言をし、物議を醸すほどの存在だった。

大谷はドラフト前からMLB挑戦の意向が強く、各球団が指名を見送るなか、日本ハムが単独1位で強行指名した。

結果的に、日本ハムは大谷を口説き落とし、史上初の二刀流として育て上げた。
その後の活躍を考えれば、日本ハムの戦略と育成方針はプロ野球史に残る大成功であり、野球ファンとしてはどれだけ感謝しても足りないくらいだろう。

大谷はNPB、MLBの両方で歴史的な存在となった。
彼を超える存在は、しばらく現れないだろう。

一方の藤浪も、高卒投手としては十分な実績を残している。
プロ入り直後の活躍は見事であり、その後は制球難に苦しみながらも、MLB挑戦までたどり着いた。
大谷の存在があまりに大きいため比較されがちだが、藤浪も高卒ドラフト1位投手として成功した部類に入るだろう。

2012年は、ドラフト当時の評価では藤浪が中心にいて、プロ入り後の到達点では大谷が大きく抜け出した年だった。

どちらも高校時代から別格の才能を見せていたが、その後のキャリアは大きく異なるものになっている。
高卒投手の評価の難しさと面白さが、これほどわかりやすく表れた年も少ないだろう。

期待値の高さゆえに苦しんだ年

マウンドで立ち尽くす投手

故障や伸び悩みで苦しむケースも多い

一方で、ドラフト当時の評価が高かったにもかかわらず、プロでは思うようなキャリアを送れなかった投手も少なくない。

代表的なのは、2005年の辻内崇伸だろう。

大阪桐蔭高時代の辻内は、高校生離れした球速とスケールを持つ「怪物左腕」だった。
ドラフトでは巨人とオリックスの2球団が競合し、オリックスの中村GMが当たりくじを勘違いするドタバタがありながら、最終的に巨人が交渉権を獲得している。

しかし、プロ入り後は故障に苦しみ、ファームの試合にさえ出られない年も。
8年間巨人に在籍しながら、一軍登板がないまま現役を終えることになった。

同級生の平田良介や2学年下の中田翔とともに、甲子園を沸かせた高校時代のインパクトを考えれば、最も惜しまれる高卒投手の一人である。

2015年の髙橋純平も、期待値の高さを考えると苦しんだ例に入る。

県立岐阜商業高時代は甲子園出場こそなかったが、世代No.1右腕として評価され、ドラフトでは3球団競合の末にソフトバンクへ入団。
その年の甲子園優勝投手となった小笠原慎之介よりも、完成度は上と考えられていた。

入団後は厚い選手層に阻まれ、なかなかアピールすることができない。
それでもチャンスが回ってきた2019年には、中継ぎとして17Hと一軍で存在感を見せる。

ただ、2020年は右肩の炎症で登板なし。
復活に意気込む2021年は上々のスタートを切るも、右手の骨折で離脱。
それから戻ってくることはなく、結果的に長く活躍することはできなかった。

プロ野球で大成するには、実力だけでなく「大事なチャンスが巡ってくるタイミングで怪我をしない」ことが大事だとよくわかる例である。

BIG3・BIG4から”当たり”を見つけられるか

2016年も、高卒投手の難しさがよく表れた年だ。

この年は寺島成輝・今井達也・藤平尚真、そして広島2位指名の高橋昂也が「高校BIG4」として注目された。

中でも履正社高の寺島は世代No.1左腕と評され、ヤクルトから1位指名。
早い時期からの一軍定着を期待されていたが、プロ入り後は故障続きだった。

2020年に30試合登板を果たすものの、それ以外の年は登板機会が限られ、一軍の戦力として定着できないまま引退となった。

一方、西武からドラフト1位指名を受けた今井は、もともと寺島・藤平・高橋と比べて評価が高くなく、今井を除いた「BIG3」と評されていた。
作新学院高では、後にDeNAのドラ1となる入江大生がおり、登板機会がもらえない時期もあったのだ。

それでも3年夏にはエースとして甲子園全試合に登板し、優勝投手に輝く。
ほかの3人を凌ぐ活躍を見せ、堂々と世代No.1投手に名乗りを挙げたのだ。

西武入団後は、故障や未成年喫煙でややつまずいた時期もあったが、先発投手として着実に実績を重ねた。
制球力に課題を残しながらも、奪三振能力は大きな魅力で、2023年からは3年連続で二桁勝利を記録している。

2026年シーズンからはMLBに挑戦するなど、A評価に値するキャリアを築いた。
甲子園優勝投手としての評価を、プロでもしっかり形にした例といえる。

もっとも早い時期から評価されていたのは藤平だろう。
強豪・横浜高で1年春からベンチ入りし、秋には早くもエースの座をつかんだ。
以降も世代トップクラスの右腕として注目され、楽天からドラフト1位指名を受けている。

楽天入団後は、高卒2年目にして開幕ローテ入りを果たしたものの、先発としては思うような成績を残せなかった。

しかし、2024年に救援へ転向すると一気に開花。
勝ちパターンの一角として存在感を高め、日本代表入りするまでになった。
期待された形とは少し違っても、役割を変えて成功したケースといえる。

同じ「高校BIG4」として語られた投手でも、プロ入り後の道のりは大きく異なる。

早くから評価されていた寺島が苦しみ、夏に評価を上げた今井が先発として成功し、藤平は救援転向で開花した。

さらに言えば、2016年ドラフトにおける高卒投手の出世頭は、オリックスにドラフト4位で指名された山本由伸だろう。

世界トップクラスまで成長した山本だが、BIG4どころか、当時はドラフトの注目選手として大きく取り上げられる存在ではなかった。
後になって「ウチも山本には目をつけていた」と後出ししているスカウトを見かけるが、しっかり指名して大エースにまで育て上げたオリックスの手腕が光るところだ。

早くから評価されていた寺島、夏に評価を上げた今井、救援転向で開花した藤平、そしてBIG4の外から世界トップクラスまで成長した山本。

この年を見るだけでも、高卒投手の評価がいかに難しいかがよくわかる。

近年組は、まだ評価を決めきれない

2021年以降の投手については、まだ評価が難しい。

小園健太、風間球打、森木大智の2021年高校BIG3は、いずれも大きな期待を背負ってプロ入りしたが、2025年終了時点では苦しい状況にある。

風間はソフトバンクを戦力外となった後に現役を引退。
森木も阪神を戦力外となり、アメリカへ挑戦の場を移した。
残った小園がここから巻き返せるかどうかだが、BIG3全員が揃って一軍で活躍できていない年というのは、なかなか珍しい。

一方で、2022年の山田陽翔のように、ドラフト順位は高くなかったものの、救援で一軍戦力となりつつある選手もいる。
ダルビッシュや大谷のように長身で体格の良い”素材”の評価が高くなりやすい近年では、甲子園での実績が豊富な選手でも中位で指名できてしまう。

2023年の前田悠伍、2024年の今朝丸裕喜、藤田琉生、2025年の石垣元気は、まだ本格的な評価を下すには早い。
高卒投手は一気に伸びたり、中継ぎに配置転換されて化けるケースもあるため、現時点では「未」評価とするのが妥当だろう。

特に近年は、球速や素材の大きさだけでなく、育成環境や起用法も重要になっている。
高卒投手がすぐに一軍で結果を出す時代ではなくなっており、数年単位で見守る必要がある。

高卒No.1投手で成功しやすいのはどんなタイプか

前途有望な投手

では、どのような高卒投手がプロで成功しやすいのだろうか。

今回の一覧を見る限り、単純に「球が速い投手を取ればいい」という話ではない。

もちろん、球速は大きな武器になる。
ダルビッシュ有、大谷翔平、佐々木朗希のように、スケールの大きい投手がプロでも大きく成功するケースはよく目立つ。

ただし、辻内崇伸、佐藤由規、安樂智大、風間球打のように、球速やスケールで大きな注目を集めながら、故障や伸び悩みに苦しんだ投手も少なくない。
出力が高いほど、体への負担も大きく、怪我のリスクはつきまとってくるだろう。

高卒投手で本当に重要なのは、球速そのものよりも、自分の投球をプロで長く続けられる身体の強さ、フォームの再現性、制球力、そして環境に適応する力なのだろう。

また、完成度の高さだけで判断するのも難しい。

高校時代に完成度が高い投手は、早い段階で一軍に近づきやすい一方で、プロ入り後の伸びしろが限られることもある。
逆に、菊池雄星や今井達也のように、時間をかけながら大きく育つ投手もいる。

つまり、高卒投手を見るうえでは、今の完成度だけでなく、数年後にどこまで伸びるかを見極める必要がある
それが難しく、スカウトの頭を悩ませるところなのだが。
その視点で言えば、体格やスケールが大きい、つまり伸びしろがあると思われる投手に人気が集まるのは自然だろう。

さらに、先発にこだわりすぎないことも重要だ。

松井裕樹や西村健太朗のように、プロでは救援として大きな実績を残した投手もいる。
藤平尚真や山田陽翔のように、役割を変えることで一軍戦力になるケースもある。

高校時代にエースだったからといって、プロでも必ず先発として輝くとは限らない。
むしろ、適性を見極めて役割を変えられるかどうかが、成功と失敗を分けることもある。
その点では、スカウトだけでなく現場の手腕によるところも大きいのだろう。

どの球団が成功を引きやすいのか

球団別に見ると、高卒投手の成功例が目立つ球団もある。

たとえば西武は、涌井秀章、菊池雄星、今井達也、髙橋光成、山田陽翔など、高卒投手を一軍戦力に育てた例が多い。
古くは松坂大輔、野手では森友哉など、高卒のスター候補はしっかりと入札している印象だ。
数年前は、破壊力のある打撃のチームというイメージが強かったが、しっかりとエース級の投手を育てられるチームだと言える。

日本ハムも、ダルビッシュ有、大谷翔平という歴史的な成功例がある。
どちらも指名時点でリスクを抱えながら、球界を代表する存在まで育てた点は大きい。
2021年ドラフト1位の達孝太はすでにローテーション入り、2024年ドラフト1位の柴田獅子も大成する気配を漂わせている。
長身右腕を大きく育てるノウハウがあるチームと言って良いだろう。

楽天も、田中将大、松井裕樹、藤平尚真と、高卒投手の成功例がある。
田中は先発エース、松井は守護神、藤平は救援転向後に開花と、形は違っても一軍で結果を残しており、ドラフト1位で高卒投手に入札するのが少ないチームながら、良い素材を引き当てていることがわかる。

ただし、「この球団なら必ず成功する」とまでは言えない。

同じ球団でも成功例と失敗例はあるし、時代によって育成方針やコーチング体制も変わる。
高卒投手は本人の身体、故障の有無、起用法、チーム事情によっても大きく結果が変わる。

それでも、成功例の多い球団に共通しているのは、素材の大きい投手に時間を与え、必要に応じて役割を変えながら一軍戦力にしている点だろう。

高卒投手は、指名して終わりではない。

むしろ、指名してからの数年間でどう育てるか、どのタイミングで一軍に上げるか、先発にこだわるのか、救援に回すのか。
そこまで含めて、ドラフトの成否が決まるのだ。

まとめ

2001年から2025年までの「高卒No.1投手」を振り返ると、ドラフト時点の評価がそのまま成功につながった例は確かにある。
競合する覚悟で入札する価値は、十分にあるだろう。

一方で、高校時代に圧倒的だった投手でも、プロで苦しむケースは少なくなかった。

「高卒No.1投手」という肩書きは、将来の成功を約束するものではない。

成功するには、球速や甲子園での実績だけでなく、身体の強さ、伸びしろ、修正力、役割変更への対応力、そして球団の育成環境が必要になる。

だからこそ、高卒投手のドラフトは難しい。

それでも、ダルビッシュ有、田中将大、大谷翔平のように、期待を超えて球界の歴史を変える投手が出てくるからこそ、高卒投手には大きなロマンがある。
これは大卒・社会人卒には求めづらい大きな魅力であり、ファンもスカウトもそこに夢を見てしまうのだろう。

次に「高校生No.1右腕」「世代トップ左腕」と呼ばれる投手は、プロでどんなキャリアを歩むのか。

その答えがわかるのは、ドラフト当日ではなく、数年後のグラウンドの上である。

おまけ:2026年ドラフト展望~次の「高卒No.1投手」は誰か~

2026年の高校生No.1投手は、だれになるだろうか。

夏の甲子園が始まる前の執筆時点では、横浜高の織田翔希と山梨学院高の菰田陽生が双璧という評価をされている。
また、2025年夏の甲子園優勝投手となった沖縄尚学高の末吉良丞も、世代トップ左腕としてBIG3に加えられる存在だ。

織田 翔希(横浜高)

185cm 80kg 右投げ右打ち MAX154km

名門・横浜高校で1年時からマウンドに上がり、高1秋&高2春と全国連覇。
MLBスカウトからの評価も高いが、福岡県北九州市出身ということもあり、ソフトバンクと相思相愛か。

菰田 陽生(山梨学院高)

195cm 102kg 右投げ右打ち MAX152km

恵まれた体格から投げ下ろすボールは威力抜群。
春のセンバツでもホームランを放つなど、打者としての評価も高いが、左手の骨折で最後までアピールできず。

末吉 良丞(沖縄尚学高)

175cm 90kg 左投げ左打ち MAX150km

ガッチリとした体型から、緩急を使った投球ができる世代No.1左腕。
昨年優勝を果たした夏の甲子園で、今年もアピールできるか。

個人的な考察

高校BIG3を挙げるとすれば上記の3人になるだろうが、実際は織田・菰田の二大巨頭という扱いになるのではないか。
野手としての評価も高い菰田に、甲子園を連覇している織田と、2012年の大谷と藤浪を彷彿とさせる並びだ。
それでいうと、左腕の末吉は大成できなかった濱田達郎の立ち位置になってしまうのだが…

そのチーム状況や構成を考えず、個人的な評価だけで良いのであれば、菰田を指名してほしい
打者として評価する声も多かったが、この恵まれた体格と馬力で、2年目の夏くらいから先発として活躍してくれるのではないか。

オリックスが好きそうなタイプであり、獲得できれば山下舜平太とWタワーとして君臨しそうだ。
日本ハムも迷わず飛び込んできそうだが、これまた好きそうなソフトバンクが織田に行き、完成度の高い大卒に流れる球団もあることを考えると、意外と3球団競合くらいに収まりそう。
中日にはここに突っ込んでほしい。

現時点での投手としての完成度は、織田の方が高いだろうか。
地元ソフトバンク、横浜高校ということでDeNAが入札し、2球団での争いになればおいしいか。
西武も好みそうな経歴とタイプであり、早めに公言してくる可能性もありそう。

末吉は単独1位~2位くらいの評価になるか。
ハズレ1位で残っていれば…というところだが、この夏さらにスケールアップしたところを見せることができれば、広島や楽天が一本釣りすることも考えられる。
また、出身も高校も沖縄ということで、ソフトバンクのスカウトが熱心に見ているようだ。
織田を外しての入札、というのが既定路線かもしれない。

ほかにも大阪桐蔭高の吉岡貫介、智弁学園高の杉本真滉などの名前が挙がるが、夏の甲子園で評価を上げて、今井のように「BIG4」へ食い込むことができるだろうか。
個人的には聖隷クリストファー高の髙部陸に期待しているが、どうも進学希望のようなので、楽しみは4年後にとっておこう。

成功かどうかはまだわからないが、選手たちにもっとも夢を託せるのがドラフト当日だ。
2026年も、多くのスター選手たちが夢の舞台に足を踏み入れることを願って。

コメント

前の記事も見てね!
収支を管理してたEx…
タイトルとURLをコピーしました