7月24日(金)のDeNA戦で、3-2のサヨナラ勝ちをおさめた中日ドラゴンズ。
この試合では、2点を追う6回に細川成也の15号ソロが飛び出し、チーム本塁打数はリーグ単独トップとなった。
試合後のインタビューで、井上一樹監督は今後の攻撃について次のような考えを語っていた。
「ホームランばかりでは勝てないというのはみなさんご存じでしょうから。そこに足を絡めて小技を絡めてという野球を僕は目指したい。」
中日、細川成也の15号ソロでチーム本塁打が73本となりリーグトップも井上監督は冷静「そこに小技を絡めてという野球を僕は目指したい」:中日スポーツ・東京中日スポーツ
その後、前半戦94試合を終えた時点で、ドラゴンズの本塁打数はリーグ1位の74本。
リーグ平均の67本を上回っている。
一方で、犠打数はリーグ3位の54個(平均50.5個)、盗塁数はリーグ最少の33個(平均48.7個)。
犠打数は平均より多いものの、たしかに足を絡めた攻撃ができているとは言い難い。
しかし、この井上監督の発言は、個人的に少し引っかかる部分があった。
ホームランを打てるのであれば、打てるだけ打った方がよいのではないか。
盗塁や犠打が少なくても、本塁打を多く打てるチームなら十分に勝てるのではないだろうか。

現に前半戦終了時点で、ドラゴンズの得点数はリーグ3位の315点。
リーグ平均の310.8点をわずかながら上回っている。
圧倒的な得点力があるとはいえないものの、足や小技を増やすことだけでなく、本塁打を軸に攻撃力を伸ばす方向も考えられるはずだ。
そもそも、過去のプロ野球で「本塁打は多いが、盗塁や犠打は少ない」というチームは、実際にどのような成績を残しているのか。
今回は2005~2025年のセ・パ両リーグを対象に、本塁打数リーグ1位の球団を調査。
盗塁数、犠打数、得点数、失点数、レギュラーシーズンの最終順位を比較し、「ホームランばかりのチームは本当に勝てないのか」を検証していく。
※本記事ではレギュラーシーズンの順位を使用
※本塁打数が同数1位だった場合は両球団を対象とする
※データは日本野球機構の公式記録をもとに筆者が独自集計
バンテリンドームにホームランウイングが設置され、「野球の華」とされるホームランが増えてきた中日ドラゴンズ。
ドラゴンズがこれから目指すべき攻撃の形についても、過去のデータをもとに考えてみたい。
ホームランウイングについては、以下の記事もご覧ください。

今回の検証方法
「ホームランばかりのチーム」といっても、明確な定義があるわけではない。
本塁打数がリーグ1位でも、四球や進塁打を絡め、さまざまな形で得点している可能性がある。
また、盗塁や犠打が少ないからといって、攻撃を本塁打だけに頼っているとは限らない。
そこで本記事では、本塁打数がリーグ1位だった球団のうち、盗塁数と犠打数がともに下位だった球団を、便宜上「本塁打中心型のチーム」として扱う。
ただし、条件を厳しくしすぎると該当球団が少なく、十分な比較ができない可能性がある。
そのため、今回は「厳格条件」と「広義条件」の2段階で確認する。
厳格条件
以下のすべてを満たす球団を対象とする。
- 本塁打数がリーグ1位
- 盗塁数がリーグ5位以下
- 犠打数がリーグ5位以下
6球団中、盗塁と犠打がともに下位2球団となっているケースである。
広義条件
以下のすべてを満たす球団を対象とする。
- 本塁打数がリーグ1位
- 盗塁数がリーグ4位以下
- 犠打数がリーグ4位以下
こちらは、盗塁と犠打がともにリーグ下位半分だったケースを対象とする。
もちろん、厳格条件に該当する球団は、広義条件にも含まれる。
集計結果を見てから基準を変更するのではなく、あらかじめ設定した2つの条件で、それぞれの成績を比較していく。
得点数と失点数も確認する
本塁打数が多く、盗塁や犠打が少ないチームが上位に入っていたとしても、それだけで「ホームラン中心の攻撃によって勝った」とは判断できない。
失点を抑える投手力や守備力によって、上位へ進出していた可能性があるからだ。
反対に、本塁打数がリーグ1位でありながら、チーム成績が悪かった場合でも、その原因が足や小技の不足にあったとは限らない。
チームの失点数が多かったのであれば、盗塁や犠打を多少増やしたところで、順位が大きく変わったとは考えにくいだろう。
そこで今回は、次の項目を確認する。
| 項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| 本塁打数 | 本塁打数リーグ1位の球団を抽出するため |
| 盗塁数 | 足を絡めた攻撃の多さを確認するため |
| 犠打数 | 小技の代名詞であるバント数を確認するため |
| 得点数 | 攻撃全体が機能していたのか確認するため |
| 失点数 | 投手力・守備力の影響を確認するため |
| シーズン順位 | 最終的な成績を確認するため |
本塁打、盗塁、犠打、得点、失点については、実数だけでなく、各年度のリーグ内順位を中心に比較する。
対象期間の2005~2025年は、年度によって試合数が異なる。
特に2020年は、新型コロナウイルスの影響により、レギュラーシーズンが120試合に短縮された。
また、使用球や球場、リーグ全体の得点環境も年度によって異なるため、同じ本塁打数や得点数でも、その価値が常に同じとは限らない。
各年度のリーグ内順位を使うことで、試合数や得点環境が異なるシーズンでも、同じ年の他球団と比べてどの位置にいたのかを確認できる。
まずは2025年の本塁打1位球団を確認
2005年まで対象を広げる前に、まずは直近の2025年を確認してみよう。
| リーグ | 球団 | 本塁打 | 盗塁 | 犠打 | 得点 | 失点 | 最終順位 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| セ | DeNA | 110本 (1位) | 66個 (3位) | 82個 (6位) | 510点 (1位) | 456点 (2位) | 2位 | 条件外 |
| パ | 日本ハム | 129本 (1位) | 79個 (4位) | 57個 (6位) | 548点 (2位) | 409点 (2位) | 2位 | 広義条件 |
※順位はいずれも各リーグ内のもの
※厳格条件は盗塁・犠打ともに5位以下、広義条件はともに4位以下
※失点順位は、失点数が少ない球団から順に算出
セ・リーグ:横浜DeNAベイスターズ
2025年のセ・リーグで本塁打数1位だったのは、横浜DeNAベイスターズである。
DeNAはセ・リーグで唯一100本を超える110本塁打を記録。
得点数も510点でリーグ1位となっており、本塁打の多さが得点力につながっていたことが分かる。
一方、犠打数は82個でリーグ最少だったものの、盗塁数は66個で3位。
盗塁と犠打がともに4位以下ではないため、今回設定した厳格条件、広義条件のいずれにも当てはまらない。
失点数も456点でリーグ2位の少なさ。
攻撃力だけでなく守備力も上位に入り、レギュラーシーズンを2位で終えている。
本塁打数と得点数がともにリーグ1位だった一方で、犠打数は最少だった。
少なくとも2025年のDeNAを見る限り、犠打が少ないことが得点力の低下に直結するとはいえない。
パ・リーグ:北海道日本ハムファイターズ
パ・リーグの本塁打数1位は、北海道日本ハムファイターズだった。
日本ハムは129本塁打を記録。
2位のソフトバンクは101本だったため、28本もの差をつけている。
得点数も548点でリーグ2位。
1位ソフトバンクの551点とはわずか3点差であり、本塁打を中心とした攻撃でリーグトップクラスの得点力を発揮した。
一方、盗塁数は79個で4位、犠打数は57個でリーグ最少だった。
盗塁と犠打がともに4位以下となっているため、今回の広義条件では「本塁打中心型のチーム」に該当する。
それでも日本ハムは83勝57敗3分、勝率.593を記録。
首位ソフトバンクと4.5ゲーム差の2位となり、シーズン終盤まで優勝を争った。
失点数も409点でリーグ2位の少なさだったため、好成績の要因が打撃にだけあったとはいえない。
しかし、得点数もリーグ2位であり、足や小技が少ないことで攻撃力が低下していたとも考えにくい。
2025年の日本ハムは、盗塁と犠打がともにリーグ下位でありながら、リーグ屈指の本塁打数とトップクラスの得点力を記録し、シーズン2位に入った。
直近の1年だけを見れば、「足や小技が少ない本塁打型のチームは勝てない」とは言い切れない結果となっている。
それでは、対象を2005年まで広げると、どのような傾向が見えてくるのだろうか。
2005~2024年の本塁打数リーグ1位球団
2025年については前項で確認したため、ここからは2005~2024年の本塁打数リーグ1位球団を見ていく。
なお、記事全体の集計や比較には、2025年のDeNAと日本ハムも含めている。
調査対象は、2005~2025年の21年間。
セ・パ両リーグを合わせた42パターンである。
ただし、2020年のセ・リーグでは巨人とDeNAがともに135本塁打を記録し、同数でリーグ1位となった。
両球団を対象に含めたため、今回の検証対象は合計43球団となる。
このうち、2025年の2球団は前項で取り上げているため、以下の表には残る41球団を掲載する。
直近の傾向を確認しやすいように、2024年から2005年へ遡る順番で見ていこう。
本塁打数リーグ1位球団の一覧
2005~2024年の本塁打数リーグ1位球団と、盗塁・犠打・得点・失点・最終順位は以下のとおり。
表が長いため、詳細を確認したい場合は「2005~2024年の全データを見る」を押してほしい。
2005~2024年の全データを見る(41球団)
| 年度 | 球団 | 本塁打 | 盗塁 | 犠打 | 得点 | 失点 | 最終順位 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2024 | ヤクルト | 103本 (1位) | 67個 (2位) | 137個 (1位) | 506点 (2位) | 556点 (6位) | 5位 | 条件外 |
| 2024 | ソフトバンク | 114本 (1位) | 89個 (3位) | 105個 (4位) | 607点 (1位) | 390点 (1位) | 1位 | 条件外 |
| 2023 | 巨人 | 164本 (1位) | 48個 (4位) | 93個 (5位) | 523点 (3位) | 507点 (4位) | 4位 | 広義条件 |
| 2023 | オリックス | 109本 (1位) | 52個 (6位) | 83個 (6位) | 508点 (3位) | 428点 (1位) | 1位 | 厳格条件 |
| 2022 | ヤクルト | 174本 (1位) | 69個 (2位) | 86個 (5位) | 619点 (1位) | 566点 (5位) | 1位 | 条件外 |
| 2022 | 西武 | 118本 (1位) | 60個 (6位) | 78個 (6位) | 464点 (5位) | 448点 (1位) | 3位 | 厳格条件 |
| 2021 | 巨人 | 169本 (1位) | 65個 (4位) | 48個 (6位) | 552点 (4位) | 541点 (4位) | 3位 | 広義条件 |
| 2021 | オリックス | 133本 (1位) | 50個 (5位) | 80個 (6位) | 551点 (3位) | 500点 (2位) | 1位 | 厳格条件 |
| 2020※ | DeNA※ | 135本 (1位) | 31個 (6位) | 51個 (6位) | 516点 (3位) | 474点 (3位) | 4位 | 厳格条件 |
| 2020※ | 巨人※ | 135本 (1位) | 80個 (1位) | 59個 (4位) | 532点 (1位) | 421点 (1位) | 1位 | 条件外 |
| 2020 | ソフトバンク | 126本 (1位) | 99個 (1位) | 81個 (5位) | 531点 (2位) | 389点 (1位) | 1位 | 条件外 |
| 2019 | 巨人 | 183本 (1位) | 83個 (2位) | 84個 (4位) | 663点 (1位) | 573点 (3位) | 1位 | 条件外 |
| 2019 | ソフトバンク | 183本 (1位) | 113個 (3位) | 100個 (2位) | 582点 (4位) | 564点 (1位) | 2位 | 条件外 |
| 2018 | DeNA | 181本 (1位) | 71個 (3位) | 71個 (6位) | 572点 (6位) | 642点 (3位) | 4位 | 条件外 |
| 2018 | ソフトバンク | 202本 (1位) | 80個 (5位) | 102個 (3位) | 685点 (2位) | 579点 (2位) | 2位 | 条件外 |
| 2017 | 広島 | 152本 (1位) | 112個 (1位) | 116個 (1位) | 736点 (1位) | 540点 (3位) | 1位 | 条件外 |
| 2017 | ソフトバンク | 164本 (1位) | 73個 (4位) | 156個 (1位) | 638点 (2位) | 483点 (1位) | 1位 | 条件外 |
| 2016 | 広島 | 153本 (1位) | 118個 (1位) | 91個 (3位) | 684点 (1位) | 497点 (1位) | 1位 | 条件外 |
| 2016 | 西武 | 128本 (1位) | 97個 (4位) | 80個 (6位) | 619点 (2位) | 618点 (4位) | 4位 | 広義条件 |
| 2015 | DeNA | 112本 (1位) | 57個 (5位) | 137個 (2位) | 508点 (2位) | 598点 (6位) | 6位 | 条件外 |
| 2015 | ソフトバンク | 141本 (1位) | 94個 (3位) | 109個 (2位) | 651点 (1位) | 491点 (1位) | 1位 | 条件外 |
| 2014 | 広島 | 153本 (1位) | 96個 (2位) | 120個 (4位) | 649点 (2位) | 610点 (3位) | 3位 | 条件外 |
| 2014 | 西武 | 125本 (1位) | 74個 (4位) | 155個 (3位) | 574点 (4位) | 600点 (4位) | 5位 | 条件外 |
| 2013 | 巨人 | 145本 (1位) | 90個 (2位) | 109個 (5位) | 597点 (2位) | 508点 (2位) | 1位 | 条件外 |
| 2013 | ソフトバンク | 125本 (1位) | 87個 (4位) | 144個 (2位) | 660点 (1位) | 562点 (3位) | 4位 | 条件外 |
| 2012 | 巨人 | 94本 (1位) | 102個 (1位) | 134個 (3位) | 534点 (1位) | 354点 (1位) | 1位 | 条件外 |
| 2012 | 日本ハム | 90本 (1位) | 82個 (4位) | 161個 (1位) | 510点 (2位) | 450点 (2位) | 1位 | 条件外 |
| 2011 | 巨人 | 108本 (1位) | 106個 (1位) | 124個 (5位) | 471点 (3位) | 417点 (2位) | 3位 | 条件外 |
| 2011 | 西武 | 103本 (1位) | 88個 (4位) | 158個 (1位) | 571点 (1位) | 522点 (5位) | 3位 | 条件外 |
| 2010 | 巨人 | 226本 (1位) | 96個 (2位) | 76個 (6位) | 711点 (2位) | 617点 (2位) | 3位 | 条件外 |
| 2010 | 西武 | 150本 (1位) | 111個 (2位) | 113個 (3位) | 680点 (2位) | 642点 (6位) | 2位 | 条件外 |
| 2009 | 巨人 | 182本 (1位) | 84個 (2位) | 114個 (4位) | 650点 (1位) | 493点 (1位) | 1位 | 条件外 |
| 2009 | 西武 | 163本 (1位) | 115個 (2位) | 93個 (5位) | 664点 (2位) | 627点 (4位) | 4位 | 条件外 |
| 2008 | 巨人 | 177本 (1位) | 78個 (2位) | 113個 (6位) | 631点 (1位) | 532点 (2位) | 1位 | 条件外 |
| 2008 | 西武 | 198本 (1位) | 107個 (1位) | 95個 (5位) | 715点 (1位) | 626点 (4位) | 1位 | 条件外 |
| 2007 | 巨人 | 191本 (1位) | 63個 (4位) | 102個 (5位) | 692点 (1位) | 556点 (1位) | 1位 | 広義条件 |
| 2007 | 西武 | 126本 (1位) | 118個 (1位) | 118個 (3位) | 564点 (4位) | 585点 (4位) | 5位 | 条件外 |
| 2006 | ヤクルト | 161本 (1位) | 83個 (1位) | 99個 (4位) | 669点 (1位) | 642点 (4位) | 3位 | 条件外 |
| 2006 | 日本ハム | 135本 (1位) | 69個 (5位) | 133個 (1位) | 567点 (2位) | 452点 (1位) | 1位 | 条件外 |
| 2005 | 巨人 | 186本 (1位) | 38個 (5位) | 69個 (6位) | 617点 (4位) | 737点 (5位) | 5位 | 厳格条件 |
| 2005 | ソフトバンク | 172本 (1位) | 72個 (2位) | 86個 (3位) | 658点 (2位) | 504点 (2位) | 1位 | 条件外 |
※厳格条件:本塁打数リーグ1位かつ、盗塁数と犠打数がともに5位以下
※広義条件:本塁打数リーグ1位かつ、盗塁数と犠打数がともに4位以下
※同数だった項目は、同順位として扱う
※失点順位は、失点数が少ない球団から順に算出
※最終順位はレギュラーシーズンの順位
そもそも本塁打数1位の球団は勝っているのか
まずは盗塁や犠打の多さを考慮せず、本塁打数リーグ1位の球団全体が、どのような成績を残していたのか確認する。
約半数の球団が優勝している
2005~2025年の本塁打数リーグ1位、合計43球団を集計した結果は以下のとおりである。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 対象球団数 | 43球団 |
| リーグ優勝 | 20球団 |
| 優勝率 | 46.5% |
| Aクラス | 32球団 |
| Aクラス率 | 74.4% |
| 平均シーズン順位 | 2.35位 |
| 平均得点順位 | 2.14位 |
| 平均失点順位 | 2.70位 |
※優勝率とAクラス率は小数第2位を四捨五入
※平均順位は小数第3位を四捨五入
※失点順位は、失点数が少ない球団から順に算出

本塁打数リーグ1位の43球団のうち、リーグ優勝を果たしたのは20球団。
優勝率は46.5%となった。
6球団のうち優勝できるのは1球団だけであることを考えると、半数近くがリーグ優勝を果たしているのは、かなり高い割合といえる。
Aクラス入りは32球団で、全体の74.4%。
およそ4球団に3球団が、レギュラーシーズンを3位以内で終えていた。
平均シーズン順位も2.35位となっており、本塁打数リーグ1位の球団は、全体として上位に入る傾向がはっきりと表れている。
本塁打の多さは得点にもつながっていた
平均得点順位は2.14位だった。
本塁打数が多くても、ソロホームランばかりでは、本数ほど得点が伸びない可能性もある。
しかし、実際には本塁打数1位の球団の多くが、得点数でもリーグ上位に入っていた。
本塁打を多く打つことは、少なくともチームの得点力と無関係ではない。
好成績の要因を本塁打だけに求めることはできない
一方、平均失点順位も2.70位と、リーグ平均の3.5位を上回っている。
本塁打数1位の球団は、打線だけが優れていたのではなく、失点を抑える力も比較的高かった。
打てる選手を並べるだけの戦力を持つチームは、投手力や守備力の整備も進めていることが多いのだろう。
つまり、43球団の好成績をすべて本塁打の多さによるものと判断することはできないということだ。
今回の集計から「ホームランを多く打てば、それだけで勝てる」とまでは断定できない。
それでも、43球団中20球団が優勝し、32球団がAクラスに入っている以上、少なくとも本塁打数が多いことが勝利の妨げになることはないだろう。
むしろ、本塁打数リーグ1位の球団は、シーズンを通して上位へ進出しやすい傾向が見られた。
では、その中でも盗塁や犠打が少なかった「本塁打中心型のチーム」に絞ると、成績はどのように変化するのだろうか。
盗塁・犠打が少ない本塁打中心型のチームは勝てるのか
本塁打数リーグ1位の球団は、全体として上位に入りやすいことが分かった。
では、その中でも盗塁や犠打が少なかった「本塁打中心型のチーム」は、どのような成績を残していたのだろうか。
まずは、盗塁数と犠打数がともに5位以下だった厳格条件から確認する。
厳格条件に該当した5球団
2005~2025年の本塁打数リーグ1位、全43球団のうち、厳格条件に該当したのは以下の5球団だった。
| 年度 | 球団 | 本塁打 | 盗塁 | 犠打 | 得点 | 失点 | 最終順位 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | オリックス | 109本 (1位) | 52個 (6位) | 83個 (6位) | 508点 (3位) | 428点 (1位) | 1位 |
| 2022 | 西武 | 118本 (1位) | 60個 (6位) | 78個 (6位) | 464点 (5位) | 448点 (1位) | 3位 |
| 2021 | オリックス | 133本 (1位) | 50個 (5位) | 80個 (6位) | 551点 (3位) | 500点 (2位) | 1位 |
| 2020 | DeNA | 135本 (1位) | 31個 (6位) | 51個 (6位) | 516点 (3位) | 474点 (3位) | 4位 |
| 2005 | 巨人 | 186本 (1位) | 38個 (5位) | 69個 (6位) | 617点 (4位) | 737点 (5位) | 5位 |
5球団の成績をまとめると、以下のようになる。
| 項目 | 結果 |
| 該当球団数 | 5球団 |
| 全43球団に占める割合 | 11.6% |
| リーグ優勝 | 2球団 |
| 優勝率 | 40.0% |
| Aクラス | 3球団 |
| Aクラス率 | 60.0% |
| 平均シーズン順位 | 2.80位 |
| 平均得点順位 | 3.60位 |
| 平均失点順位 | 2.40位 |
厳格条件に該当したのは、全43球団のうち5球団。
割合にすると11.6%だった。
本塁打数がリーグ1位でありながら、盗塁数と犠打数がともに下位2球団へ入るケースは、意外にもかなり少なかった。
ホームランバッターが多いチームでも、盗塁か犠打の少なくとも一方は、リーグ中位以上に入っているケースが多いということだ。
一方、該当した5球団の成績は決して悪くない。
2021年と2023年のオリックスがリーグ優勝を果たし、2022年の西武も3位に入っている。
5球団中3球団がAクラスで、平均シーズン順位は2.80位。
盗塁と犠打がともに少なくても、好成績を残している。
厳格条件だけを見ても、「ホームランばかりのチームは勝てない」と断定できる結果ではなかった。
ただし、対象が5球団しかないため、これだけで明確な傾向を判断するのは難しい。
そこで、盗塁数と犠打数がともに4位以下だった「広義条件」まで対象を広げて確認する。
広義条件まで広げると10球団
厳格条件には該当しないものの、広義条件に当てはまったのは、次の5球団である。
| 年度 | 球団 | 本塁打 | 盗塁 | 犠打 | 得点 | 失点 | 最終順位 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2025 | 日本ハム | 129本 (1位) | 79個 (4位) | 57個 (6位) | 548点 (2位) | 409点 (2位) | 2位 |
| 2023 | 巨人 | 164本 (1位) | 48個 (4位) | 93個 (5位) | 523点 (3位) | 507点 (4位) | 4位 |
| 2021 | 巨人 | 169本 (1位) | 65個 (4位) | 48個 (6位) | 552点 (4位) | 541点 (4位) | 3位 |
| 2016 | 西武 | 128本 (1位) | 97個 (4位) | 80個 (6位) | 619点 (2位) | 618点 (4位) | 4位 |
| 2007 | 巨人 | 191本 (1位) | 63個 (4位) | 102個 (5位) | 692点 (1位) | 556点 (1位) | 1位 |
この5球団を厳格条件の5球団に加えると、広義条件に該当したのは合計10球団となる。
広義条件10球団の成績
| 項目 | 結果 |
| 該当球団数 | 10球団 |
| 全43球団に占める割合 | 23.3% |
| リーグ優勝 | 3球団 |
| 優勝率 | 30.0% |
| Aクラス | 6球団 |
| Aクラス率 | 60.0% |
| 平均シーズン順位 | 2.80位 |
| 平均得点順位 | 3.00位 |
| 平均失点順位 | 2.70位 |
広義条件の10球団のうち、リーグ優勝を果たしたのは、2007年の巨人、2021年と2023年のオリックスの3球団。
Aクラス入りは6球団で、Aクラス率は60.0%。
平均シーズン順位は2.80位だった。
本塁打数がリーグ1位で、盗塁数と犠打数がともに下位半分だった球団でも、6割がAクラスに入っている。
「小技が少なければまったく勝てない」という結果ではないだろう。
一方、本塁打数リーグ1位の全43球団では、優勝率46.5%、Aクラス率74.4%、平均シーズン順位2.35位だった。
全体と比べると、広義条件の10球団は優勝率、Aクラス率、平均順位のいずれも数字が下がっている。
小技が少ない本塁打中心型のチームは、勝つことこそできるものの、本塁打数1位の球団全体と比べると、やや苦戦していたことになる。
「ホームランばかりでも勝てる」が、「小技や足を絡めた方がより勝てる」というのが正しいだろうか。
広義条件10球団と、それ以外の33球団を比較
より違いを明確にするため、広義条件に該当した10球団と、それ以外の33球団を比較する。
| 分類 | 球団数 | 優勝率 | Aクラス率 | 平均順位 | 平均得点順位 | 平均失点順位 |
| 広義条件 | 10球団 | 30.0% | 60.0% | 2.80位 | 3.00位 | 2.70位 |
| それ以外 | 33球団 | 51.5% | 78.8% | 2.21位 | 1.88位 | 2.70位 |
広義条件の10球団の優勝率は30.0%だったのに対し、それ以外の33球団は51.5%。
Aクラス率も、広義条件の60.0%に対し、それ以外は78.8%となった。
平均シーズン順位にも、2.80位と2.21位の差が見られる。
この数字だけを見れば、盗塁や犠打がともに少ない球団の方が、やや成績が低かった。
さらに大きな差が見られたのが、平均得点順位である。
広義条件の10球団は3.00位だったのに対し、それ以外の33球団は平均1.88位だった。
本塁打数がリーグ1位でも、盗塁と犠打がともに少ない球団は、チーム全体の得点順位が伸びにくい傾向にある。
一方、平均失点順位は、両グループとも2.70位で、差はまったくない。
つまり、両グループの成績差は、失点を抑える力よりも、得点力の差によって生まれた可能性がある。
もっとも、これだけで「盗塁や犠打が少ないと得点力が落ちる」とまでは断定できない。
広義条件の球団は、本塁打以外の安打や四球、出塁率などが低かった可能性もある。
本塁打を打つ前に走者をためられなければ、ソロホームランが多くなり、チーム全体の得点は伸びにくい。
また、「それ以外」の33球団も、必ずしも盗塁と犠打の両方を積極的に使っていたわけではない。
盗塁か犠打のどちらか一方が3位以上であれば、今回の条件からは外れてしまう。
今回の比較から確認できるのは、盗塁と犠打がともに少なかった本塁打数1位の球団は、それ以外の球団よりも、得点順位とシーズン順位がやや低かったという傾向までだ。
井上監督が語ったように、本塁打だけでなく、足や小技を得点につなげるという考え方には、一定の合理性があるのかもしれない。
「ホームランを打てれば、足や小技を捨ててよいわけではない」ということは言えるだろう。
しかし、広義条件に該当した10球団の中にも、リーグ優勝を果たしたチームが3球団存在する。
盗塁や犠打が少なくても優勝できた球団は、ほかのチームと何が違ったのだろうか。
次は、本塁打数リーグ1位の球団をAクラスとBクラスに分け、得点数と失点数の違いを確認する。
本塁打数1位の球団は何が勝敗を分けたのか
前項では、盗塁数と犠打数がともに少なかった広義条件の10球団は、それ以外の33球団よりも得点順位とシーズン順位がやや低いことがわかった。
一方、平均失点順位はどちらも2.70位で、差は見られない。
つまり、「小技の少ない本塁打中心型のチームがやや苦戦した理由」を考えるうえでは、失点数よりも得点力の差が目立っていたことになる。
では、本塁打数リーグ1位の球団がAクラスに入るか、Bクラスに終わるかを分けたものは何だったのだろうか。
ここでは小技の多さに関係なく、対象となった全43球団をAクラスとBクラスに分け、得点順位と失点順位を比較する。
Aクラス32球団とBクラス11球団を比較
| 分類 | 球団数 | 平均得点順位 | 得点2位以内 | 平均失点順位 | 失点2位以内 |
|---|---|---|---|---|---|
| Aクラス | 32球団 | 1.84位 | 26球団(81.3%) | 2.19位 | 23球団(71.9%) |
| Bクラス | 11球団 | 3.00位 | 5球団(45.5%) | 4.18位 | 0球団(0%) |
※割合は小数第2位を四捨五入
Aクラス32球団の平均得点順位は1.84位だったのに対し、Bクラス11球団は3.00位だった。
本塁打数がリーグ1位であっても、必ずしもチーム全体の得点数まで多いとは限らないようだ。
Aクラス32球団のうち、26球団は得点数がリーグ2位以内だった。
一方、Bクラス11球団で得点数が2位以内だったのは5球団のみ。
本塁打を多く打つだけでなく、チーム全体として得点につなげられているかどうかが、順位に影響していたと考えられる。
さらに大きな差が表れたのが、失点順位である。
Aクラス32球団の平均失点順位は2.19位だったのに対し、Bクラス11球団は4.18位。
その差は1.99となった。
Aクラスに入った32球団のうち、23球団は失点数がリーグ2位以内。
対して、Bクラスに終わった11球団には、失点数がリーグ2位以内のチームが一つもない。
今回の検証では、本塁打数がリーグ1位でも、失点をリーグ上位の水準に抑えられなかった球団はBクラスに終わるケースが多かった。
本塁打数1位の球団であっても、上位へ進出するには、本塁打をチーム全体の得点につなげることに加え、投手力や守備力まで整備することが不可欠である。
最後に、盗塁と犠打がともに少なかった広義条件の10球団のうち、リーグ優勝を果たした3球団を深掘りしてみよう。
各球団は、得点と失点の面でどのような成績を残していたのだろうか。
本塁打中心型でも優勝した3球団
広義条件に該当した10球団のうち、リーグ優勝を果たしたのは、2007年の巨人、2021年と2023年のオリックスの3球団だった。
| 年度 | 球団 | 得点 | 失点 |
|---|---|---|---|
| 2023 | オリックス | 508点(3位) | 428点(1位) |
| 2021 | オリックス | 551点(3位) | 500点(2位) |
| 2007 | 巨人 | 692点(1位) | 556点(1位) |
3球団に共通していたのは、失点数がリーグ2位以内だったことである。
2007年の巨人は、「30本塁打カルテット」を擁し、191本塁打でリーグ1位。
リーグ2位のヤクルトに52本もの差をつける、圧倒的な数字だった。
盗塁数は4位、犠打数は5位だったものの、得点数はリーグ単独1位。
失点数もドラゴンズと並びリーグ最少タイを記録している。
本塁打を中心に得点を重ねながら、失点もリーグ最少に抑えた、攻守ともに隙の少ないチームだった。
なお、クライマックスシリーズでは、その巨人をドラゴンズが3連勝で破っている。
そのまま日本シリーズも制し、53年ぶり2度目の日本一に輝いた。
2021年のオリックスは、得点数がリーグ3位、失点数は2位。
2023年も得点数は3位だったが、失点数はリーグ最少だった。
両年とも盗塁数と犠打数は5位以下。
それでも、リーグ最多の本塁打と、リーグ屈指の投手力を組み合わせ、優勝を果たしている。
いずれも、中嶋聡監督のもとでリーグ3連覇を果たした期間のチームであり、無駄のない試合運びをしていた印象が強い。
この3球団を見る限り、盗塁や犠打が少なくても、十分な得点を奪い、失点を抑えることができればリーグ優勝は可能である。
ただし、3球団はいずれも、小技の少なさを補えるだけの明確な強みを持っていた。
2007年の巨人は、他球団を大きく上回る本塁打数に加えて、リーグ最少の失点数を記録。
2021年と2023年のオリックスは、リーグ屈指の投手力を備えていた。
盗塁や犠打に頼らなくても、得点と失点の両面で相手を上回れるだけの戦力があれば、優勝できるということだろう。
そう考えると、本塁打が多いチームでも、足や小技を絡めた攻撃を目指すというのは、優勝の可能性を高めるのに有効であるのかもしれない。
結論:「ホームランばかりでは勝てない」は本当か
2005~2025年の本塁打数リーグ1位、合計43球団を調べた結果、リーグ優勝は20球団、Aクラス入りは32球団だった。
優勝率は46.5%、Aクラス率は74.4%。
平均シーズン順位も2.35位となっており、本塁打数がリーグ1位の球団は、全体としてかなり高い成績を残している。
少なくとも、本塁打数が増えること自体は、勝利につながりやすい好材料だと考えられる。
一方、本塁打数1位に加え、盗塁数と犠打数がともに4位以下だった広義条件の10球団は、優勝率30.0%、Aクラス率60.0%、平均シーズン順位2.80位だった。
広義条件に該当しなかった33球団の平均シーズン順位は2.21位であり、盗塁と犠打がともに少なかったチームは、やや成績が低い傾向にある。
平均得点順位にも差があり、広義条件の10球団が3.00位だったのに対し、それ以外の33球団は1.88位だった。
この結果だけで「盗塁や犠打が少ないから得点力が落ちた」と断定することはできないが、本塁打が増えたからといって、これらの策を完全になくしてしまうのは、得策ではないのだろう。
今回の検証から確認できたのは、盗塁と犠打がともに少なかった本塁打数1位の球団は、それ以外の球団より得点順位とシーズン順位が低かったという傾向までである。
その意味では、井上監督が語ったように、本塁打だけでなく、足や小技も得点につなげようとする考え方には、一定の合理性があるだろう。
また、本塁打数1位の全43球団をAクラスとBクラスに分けると、Aクラス球団は得点順位だけでなく、失点順位でも好成績を残していた。
打ち勝つチームを目指す場合でも、投手力や守備力を疎かにしていては、上位に上がっていくことは難しい。
結局のところ、勝敗を左右していたのは「ホームランか、小技か」という単純な二者択一ではない。
本塁打をチーム全体の得点へつなげられるか。
そして、投手力や守備力を高く保ち、失点を抑えられるか。
相手より得点を増やし、失点を減らすことが、勝つことの唯一の近道である。
ドラゴンズが進むべき道は

では、現在の中日ドラゴンズは、どのようなチームを目指すべきなのだろうか。
攻撃面
前半戦終了時点で、本塁打数はリーグ1位。
得点数もリーグ平均を上回る3位となっている。
一方で、盗塁数はリーグ最少だが、犠打数はリーグ3位。
送りバントを使っていないチームではない。
ここで一番考慮すべきは、失敗のリスクだろう。
盗塁はもちろん、犠打も「必ずランナーを進められる」というわけではない。
フライを上げてアウトを献上するだけでなく、ダブルプレーでチャンスを潰したり、決まらずにカウントを悪くして凡退の可能性を高めたりする可能性もあるのだ。
ホームランを打てる打者には、その長所を最大限に発揮してもらうべきである。
そのうえで、出塁した走者が次の塁を狙う意識や、相手バッテリーに重圧をかける走塁、状況に応じた進塁打などを加えられれば、攻撃の幅は広がる。
2027年からDH制が導入されるとはいえ、どうしても1点が欲しい場面では、塁を進める選択肢をいくつか持っておくことも必要だ。
重要なのは、小技を使うこと自体を目的にしないことだ。
ほとんどの場面において、送りバントでアウトを一つ与えるよりも打たせた方が得点の可能性が高くなるというデータもある。
盗塁死や牽制死によって、反撃ムードを潰してしまうことも珍しくない。
チームの中軸を任せる選手には、その実力を最大限発揮できるような起用と信頼を見せる。
アピールが求められるベンチの選手たちは、持っている一芸を磨き、出番があったときに犠打や盗塁を決められるようにしっかりと準備をする。
単純ではあるが、求められているのは、選手に正しく役割を伝えられるベンチの采配。
そして、それに応えるための選手の努力なのだろう。
守備面
これまで外野フライだったような打球が、ホームランになることが増えている。
ドラゴンズの投手陣にとっては死活問題であり、早く適応しなければいけないポイントだ。
この投手の意識については、これから変わっていく点だとして、すぐに手をつけるべきは「破綻しない守備配置」を考えることだろう。
打ち勝つチームを目指すからといって、守備に不安のあるポジションで選手を起用するのは得策ではない。
いくら打てても、失点を抑えられないチームはなかなか勝てないということを、データがしっかり証明してくれている。
破綻なく守ることができるポジションの中で、しっかりと競争してくれるようなチームづくりを目指してほしい。
「ホームランが増えている」ことは、悪ではない。
試合の見応えも増え、むしろ良いことだ。
忘れないでほしいのは、「ホームランが減っても構わないから小技を増やす」のではない。
ホームランという大きな武器に、ほかの得点手段を上乗せする野球が求められる。
「打撃のチーム」でも「守りのチーム」でもない、「強い野球をするチーム」に生まれ変わり、もう一度歓喜の瞬間が訪れることを、首を長くして待つことにしよう。



コメント